【なぜ?】病院のマークが「蛇」である本当の理由|ギリシャ神話が解き明かす自己治癒力の秘密
私たちの身の回りにあふれる、当たり前すぎて気にも留めないシンボル。
その一つに、病院や救急車で目にする『杖に蛇が巻きついたマーク』があります。
実はこのマーク、世界保健機関(WHO)のシンボルにも使われている、世界共通のデザインです。なぜ、多くの文化で「毒」や「危険」の象徴とされることもある「蛇」が、生命を守る神聖な医療のシンボルなのでしょうか?
その答えは、3000年以上前のギリシャ神話の中に隠されていました。
そしてそれは、単なる昔話ではありません。私たち一人ひとりの心、その最も深い場所「潜在意識」に眠る、驚くべき自己治癒力の秘密を解き明かす壮大な物語の始まりだったのです。
新番組「ギリシャ神話ハック」の記念すべき第1回「医療のシンボルはなぜ『蛇』?- 医神アスクレピオスの誕生と隠された力」では、この根源的な謎に迫ります。
父は太陽神、母は人間。医神アスクレピオスの壮絶な誕生秘話
物語の主人公は、後に「医神」となるアスクレピオス。
彼の父は、光と理性を司る太陽神アポロン。私たちが自覚できる「顕在意識」の光そのものを象徴する、完璧な神です。
一方、母は、死すべき運命を持つ人間の王女コローニス。大地に根差した、私たちの有限な「身体」を象徴する存在でした。
光の神と大地の人間。この対照的な二人の間に宿されたアスクレピオスですが、その誕生は悲劇に彩られていました。
『待ってください…まさか、嫉妬のあまり、愛する人を殺してしまうんですか?お腹には自分の子供がいるのに…!』
父アポロンは、ある一つの「告げ口」によって激しい嫉妬に駆られ、愛するコローニスをその手で射殺してしまいます。しかし、彼女が炎に包まれるまさにその瞬間、自らの行いを激しく後悔。神の力をもって、死んだ母の胎内から、まだ息のある我が子を奇跡的に救い出したのです。
生まれながらにして、母の死という「喪失」と、父の激情がもたらした「破壊」という深い傷を魂に刻まれたアスクレピオス。彼こそが、人の痛みを本当に理解できる『傷ついた癒し手(Wounded Healer)』の原型でした。
なぜ「蛇」でなければならなかったのか?
父と離れ、賢者ケイローンの元で「意識」と「本能」の統合を学んだアスクレピオス。彼の物語は、いよいよ核心である「蛇の謎」へと迫ります。医療のシンボルに蛇が選ばれたのには、大きく二つの理由がありました。
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脱皮が象徴する「死と再生」
古い皮を脱ぎ捨てて新しく生まれ変わる蛇の姿は、病やトラウマという古い自分から解放され、新たな生命力を得る完璧なシンボルでした。 -
大地が象徴する「潜在意識の力」
地を這い、暗い穴に棲む蛇は、天上の光(意識)とは対極にある、私たちのコントロールが及ばない根源的な大地の叡智、すなわち「潜在意識」の力を象徴していたのです。
『たまに、蛇が2匹巻きついた杖のマークも見かけることがあるんですが、あれとは違うものなんですか?』
動画の中では、この鋭い疑問にもお答えしています。商業の神ヘルメスの杖「カドゥケウス」(2匹の蛇)と、医療のシンボルである「アスクレピオスの杖」(1匹の蛇)との決定的な違いとは?
「他者との交渉」と「自分自身との対話」——。その違いを知ることで、治癒というものが本質的に自分自身の内側で起こるプロセスであることが、より深く理解できるはずです。
あなたの中に眠る「癒しの力」を呼び覚ます物語
普段何気なく目にしていた病院のマークに、これほど壮大で深い意味が込められていたことに、きっと驚かれたのではないでしょうか。
アスクレピオスの物語は、現代を生きる私たちに大切なメッセージを伝えています。
真の癒しとは、自らの傷や弱さと向き合い、光である「意識」だけでなく、心の奥深くにある「潜在意識」の声に耳を澄ますことから始まるのだと。
今回の動画は、神話の世界を楽しみながら、あなた自身の内に眠る「治癒力」に光を当てるきっかけになるかもしれません。
次回は、アスクレピオスが古代の神殿で行っていたという、驚くべき治療儀式「夢を用いた治療」の謎に迫ります。