自尊心は「できた日」だけのものじゃない|潜在意識と自分の価値

目次

自尊心とは?「自分には価値がある」という感覚と、潜在意識の関係

自尊心は「できた日」だけのものじゃない|潜在意識と自分の価値

仕事でミスをした日。「次はここを直そう」と切り替えられる日もあれば、「自分には価値がない」とまで感じてしまう日もあります。同じ自分なのに、この違いはどこから来るのでしょうか。

この記事がたどり着く答えを、先に置いておきます。自尊心は、「高い・低い」だけで決まるものではありません。日によって揺れることも、何に自分の価値を預けているかで揺れ方が変わることもあると考えられます。 揺れているのは人としての価値そのものではなく、あなたが感じている「自分の価値」のほうだ、と考えることもできます。

前回の諦めの記事は、「『自分には価値がある』という感覚は、潜在意識のどこで育まれるのでしょうか?」という問いで締めくくりました。今回は、その問いから出発します。

今回は、自尊心の入口をのぞいていきます。この先の章では、意外な話もいくつか紹介します。志望校の合否で、自尊心が大きく揺れたのはどんな人だったのか。「本当の気持ち」がわかるとされるテストは、何を測っているのか。

この章でわかること

  • 「できた日」と「できなかった日」で、自分の価値の感じ方が変わる理由の入口
  • 自尊心・自信・自己評価の違い
  • この記事で一緒に考えていく、「あなたの自尊心を支えているもの」

「できた日」と「できなかった日」— 同じ自分なのに、価値の感じ方が変わるのはなぜ?

相談者
先生、私、仕事がうまくいった日は自分を認められるんです。でも、ミスをした日は「私なんて価値がない」とまで思ってしまって。同じ自分なのに、どうしてこんなに違うんでしょう?
ハック先生
その揺れに、戸惑ってしまいますよね。「できた日」と「できなかった日」で、自分の価値の感じ方が変わるのは、あなただけではありません。

同じ出来事でも、受け止め方には大きく二つの向きがあります。

出来事(例) 出来事への評価 自分全体への評価
仕事でミスをした 「このやり方を直そう」 「自分には価値がない」
試験に落ちた 「準備が足りなかった」 「私はダメな人間だ」
返信が来ない 「忙しいのかな」 「私は大切にされていない」

「出来事への評価」は、起きたことを直す方向へ向かいます。「自分全体への評価」は、一つの出来事から、自分という存在の全体へ一気に広がります。

心理学では、自尊心(自尊感情)を「自分の価値についての全体的な評価」と考えます。この感覚には、ふだんの水準と、その日その時の状態があります。ミスをした日に「価値がない」と感じても、それだけで、ふだんの自尊心が低いとは決まりません。

一つの出来事が、自分全体への評価にまで広がる。その広がり方には、人それぞれの「条件」が関わっていると考えられます。何がうまくいったときに自分の価値を感じるのか、という条件の違いです。くわしくは【ポイント1】で紐解きます。

潜在意識とのつながりも、ここに見えてきます。自分についての反応には、ゆっくり言葉にする評価だけでなく、素早く浮かぶ連想もあります。気づいたときには「私なんて」と感じている、ということも起こりえます。

一つの出来事への評価と、自分全体への評価は、同じではない。 ミスをした日に浮かぶ「私なんて」は、出来事から自分全体へ広がった評価、と見ることもできます。

考えるための問い

  • 最近の「できなかった」出来事を、出来事への評価と自分全体への評価の、どちらで受け止めましたか?
  • うまくいった日とうまくいかなかった日で、自分にかける言葉はどう変わりますか?

自尊心・自信・自己評価はどう違う?— 潜在意識から見た「自分の価値」の感覚

相談者
自尊心、自信、自己評価……。似た言葉が多くて、正直よくわかりません。何が違うんですか?
ハック先生
似ていて、混ざりやすい言葉ですよね。心理学では、次のように分けて考えます。
言葉 この記事での意味 取り違えやすいこと
自尊心(自尊感情) 自分を価値ある存在として受け止める、全体的な感覚 人としての価値そのもの
分野ごとの自己評価 仕事・勉強・見た目など、ある分野での自分の評価 自分全体の価値と、いつも一致すること
自信(自己効力感) ある課題を「やれそうだ」と思える見込み 人として大切にされる資格
優越感(自己愛的な) 人より上で、特別扱いに値すると感じること 自尊心が強くなったもの
自分への思いやり 苦しいときや失敗したときの、自分への接し方 自分を高く採点すること
潜在的な自尊心 考える前の反応から、自分への評価を調べる考え方 隠された本当の気持ち

この表は、心理学の考え方を、日常の言葉に合わせて整理したものです。専門の分野でも、言葉の線引きは少しずつ異なります。

大切なのは、自尊心と、自信や優越感を分けておくことです。仕事に自信が持てない日でも、自分を大切に思えることはあります。自尊心は、人より上だと感じることとも別の感覚です(【ポイント3】)。

自分の力を見積もるときのズレは、自己評価の記事で紐解きました。今回は、その一歩奥にある「自分には価値がある」という感覚がテーマです。自尊心も広い意味では自己評価の一つなので、二つは、まったく別のしくみではありません。

潜在意識との関わりも、見ておきましょう。この連載では、潜在意識を「考えるより先に働く心のしくみの集まり」ととらえています。自尊心でいえば、次の二つを分けると見えやすくなります。

見るところ 言葉にして答える自分への評価 考える前に浮かぶ反応
例 「私は自分を大切に思っている」 自分の名前の文字への、ちょっとした好み
わかりやすさ 本人が説明できる 本人にも説明しにくいことがある
気をつけたいこと 言葉にできる部分が、すべてとは限らない 「隠れた本音」と決めつけられない

考える前の反応を測るテストで、何がどこまでわかるのか。それは【ポイント1】でくわしく紐解きます。

自尊心は、できることの見込みとも、人より上だという感覚とも違う。自分を価値ある存在として受け止める感覚そのもの。 言葉を分けておくと、「自信がない」と「自分には価値がない」を、ひとまとめにせずにすみます。

考えるための問い

  • あなたが「自信がない」と言うとき、それは「できる見込み」の話ですか? それとも「自分の価値」の話ですか?
  • 人より上だと感じられないと、落ち着かないことはありますか?

【考えてみよう】あなたの自尊心は、何に支えられている?

相談者
先生、自分の自尊心が高いのか低いのか、診断してもらえませんか?
ハック先生
知りたくなりますよね。ただ、ここでは点数をつけることはしません。自尊心は、高いか低いかだけでは見えてこないものだからです。

点数のかわりに、自分をふり返るための問いを用意しました。答えを書き出さなくてもかまいません。思い当たる場面が浮かんだら、少しだけ立ち止まってみてください。

問い 思い出すきっかけ 紐解く章
うまくいった日にだけ、自分を認められることは? 成果が出た日と、出なかった日 【ポイント1】
一つの失敗が、自分全体の否定に広がったことは? 試験・面接・大事な発表 【ポイント1】
褒められても、素直に喜べなかったことは? 思っていたのと違う褒め言葉 【ポイント2】
子どものころ、温かさを感じた場面は? 家族や先生との、何気ない時間 【ポイント2】
人より上でないと、落ち着かないことは? SNS や職場でのくらべ合い 【ポイント3】
うまくいかない日の自分に、どんな言葉をかけている? 眠る前のひとりごと 【ポイント3】とまとめ

どの問いにも、正しい答えはありません。当てはまる数が多いから自尊心が低い、ということでもありません。

子どものころの問いは、思い出すのがつらい人もいるでしょう。そのときは、飛ばしてかまいません。育った環境や体調、人間関係など、自分では選べなかった条件もあります。それを、あなたの価値の問題にする必要はありません。

読み終えたあとに、あらためて同じ問いに戻ってきてください。問いへの答えより、問いの見え方が変わっているかもしれません。

考えるための問い

  • あなたの自尊心を、今いちばん支えているものは何でしょうか?

次の【ポイント1】では、自尊心が「高さ」だけでは測れない理由と、自分の価値が揺れるしくみを紐解いていきます。

自尊心とは?「自分には価値がある」という感覚と、潜在意識の関係

【ポイント1】自尊心は「高さ」だけでは測れない — 潜在意識から見た、自分の価値が揺れるしくみ

【考えてみよう】の表には、「うまくいった日にだけ、自分を認められることは?」「一つの失敗が、自分全体の否定に広がったことは?」という問いがありました。この章では、この二つを入口にします。

この章の答えを、ひと足先に書いておきます。自尊心は、高いか低いかだけでは測れません。同じくらい自信がある人でも、何に自分の価値を預けているかによって、出来事で揺れる大きさが違うことがあります。 「本当は自分が嫌い」かどうかを、一つのテストで見抜くこともできません。

章の後半では、「本当の気持ち」がわかるとされるテストを、約1週間あけて測り直した結果も紹介します。

この章で紐解くこと ひと言でいうと
自信がある人は、揺れないの? 自尊心には、高さのほかに「揺れ」と「条件」がある
同じ合否でも、揺れ方が違うのはなぜ? 何に自分の価値を預けているかが関わる
テストで「本当の自分」はわかる? 自分への反応はいくつもあり、一つでは決まらない

この章は、こんな方に向けて書きました。

  • 自信があるように見られるのに、ひと言で深く落ちこんでしまう
  • 結果が出ない日は、自分まで小さく感じてしまう
  • 「潜在意識では、本当は自分が嫌い」という話が気になっている

うまくいかない出来事のあと、心の中で何が起きうるのか。一枚の図で追ってみます。

flowchart TD
    A["うまくいかない
出来事"] B["その分野に
自分の価値を
預けている?"] C["預けている分野"] D["預けていない分野"] E["自分全体の価値が
揺れやすい"] F["出来事への評価に
とどまりやすい"] G["揺れの大きさは
人によって違う"] A --> B B --> C B --> D C --> E D --> F E --> G F --> G classDef event fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef ask fill:#EDE9FE,stroke:#7C3AED,stroke-width:2px,color:#2E1065 classDef stake fill:#FFE4E6,stroke:#E11D48,stroke-width:2px,color:#4C0519 classDef free fill:#E0F2FE,stroke:#0284C7,stroke-width:2px,color:#082F49 classDef note fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 class A event class B ask class C,E stake class D,F free class G note linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

この図は、「自己価値の条件」という考え方をもとにした、考え方の図です。実際の心の動き方は、人や場面によってさまざまです。

自尊心には「高さ」だけでなく「揺れ」と「条件」がある — 同じ自信でも、失敗の受け止め方は違うことがある

まわりから「自信があってうらやましい」と言われる人が、上司のひと言で、一日中落ちこんでしまう。自信がある人は、自尊心が高くて揺れないはずではなかったのでしょうか。

自尊心には、「高さ」のほかに、「揺れ」と「条件」という面もあると考えられています。

自尊心を、次の四つに分けてみると、見えやすくなります。

見るところ どんなことか 例
高さ(水準) ふだん、自分をどのくらい肯定的に捉えるか 「私は、まあ大丈夫」と思える
その日の状態 今日や、出来事の直後にどう感じるか 褒められた日は、少し気分が上がる
揺れにくさ(安定性) 時間や出来事で、どのくらい揺れるか ひと言で、一日中落ちこむ
条件(随伴性) 何がうまくいくことを、自分の価値の条件にしているか 「成果を出せたら、価値がある」

この四つは、この記事での整理です。四つの検査があって、人を分類できるわけではありません。

自尊心の研究者の中には、高い自尊心と、揺れにくく守りに追われにくい自尊心を分けて考えた人もいます。同じように自尊心が高いと答える二人でも、失敗を自分全体の否定と感じるかどうかは、異なりえます。

ただし、これは理論です。「本物の自尊心」と「偽物の自尊心」を、検査で振り分けられるという話ではありません。

日常でよく使う「プライドが高い」という言葉も、いくつかのものを、ひとまとめにしがちです。

「プライドが高い」と言われる場面(例) 見えているもの
自分の仕事に、誇りを持っている 誇り
人を見下すような態度をとる えらそうな態度(優越感)
ひと言で深く傷つき、強く反発する 傷つきやすさ(揺れやすさ)

同じ「プライドが高い」でも、見えているものはまったく違います。どの面の話なのかを分けると、その人の姿が少し見えやすくなります。

高さだけでなく、揺れ方とその条件からも、自尊心は見えてくる。 自信がありそうな人が深く落ちこむのも、「高さ」ではなく「揺れ」の面から見ると、ふしぎなことではなくなります。

考えるための問い

  • あなたの自尊心について、「高さ」と「揺れやすさ」の、どちらが気になりますか?
  • 誰かを「プライドが高い」と感じたとき、それは誇り・態度・傷つきやすさの、どれのことでしたか?

合否で自尊心が大きく揺れたのは、どんな人?— 自分の価値を何に預けているか

第一志望の進学先の、合格発表を待つ日々。同じように出願した人たちでも、結果が出た日の心の揺れ方は、人によってずいぶん違います。その違いは、どこから来るのでしょうか。

何に自分の価値を預けているかによって、同じ出来事でも、自尊心の揺れ方が変わることがあります。

心理学には、「自己価値の条件」という考え方があります。人はそれぞれ、自分の価値がかかっていると感じる分野を持っている、という考え方です。成績や仕事での成功、見た目、人からの承認などが、その例です。

ここで分けておきたいのが、「大切にしている」ことと、「価値がかかっている」ことの違いです。

見るところ 大切にしている 自分の価値がかかっている
心の声(例) 「勉強が好きで、がんばりたい」 「合格できない私には、価値がない」
結果が悪かったとき(例) 残念でも、自分全体は揺れにくい 自分全体の価値が揺れやすい

何かを大切にすることと、その結果で自分の価値が決まると感じることは、分けて考えられます。

この違いを考える手がかりになる調べがあります。

  • 進学先に出願した学生たちに、合否がわかるまでの2か月ほど、自尊心をくり返し答えてもらった
  • 勉強の出来に自分の価値を強く預けている人ほど、合否に伴う自尊心の上がり下がりが大きかった

同じ合格、同じ不合格でも、その出来事が「自分の価値」に届く強さは、人によって違っていたわけです。

とはいえ、この調べには限りもあります。

  • 小さな規模の観察で、揺れ方の違いの原因までは確かめていない
  • 心の奥の信念や、子ども時代の経験を調べたものではない

ここからは一つの考え方です。人は成功を求めるだけでなく、成功によって「自分はここにいていい」と確かめようとすることがあるのかもしれません。ただ、同じ頑張りにも、楽しさや責任、生活のためなど、いくつもの理由があります。頑張っている人を外から「自尊心の穴を埋めている」と決めつけないことも、同じくらい大切です。

価値の条件を、「無意識の命令」のように、人を操るものとして考える必要もありません。何に価値を預けやすいかは、その人が生きてきた場面や、大切にしてきたものとも重なっているはずです。

日常で気づいてみる

「〜できない自分には、価値がない」という言葉が浮かんだら、その「〜」に何が入っているかを、そっと確かめてみてください。言葉を変えようとしなくて大丈夫です。自分が何に価値を預けているのかが、少し見えてくることがあります。

同じ合否でも、何に価値を預けているかで、心の揺れ方は変わりうる。 大きく揺れるのは、心が弱いからではなく、その分野に自分の価値を強く預けているからなのかもしれません。

考えるための問い

  • あなたが「これができないと、自分には価値がない」と感じやすいのは、どんな分野ですか?
  • その分野を「大切にしている」ことと、「価値がかかっている」ことは、同じでしょうか?

「本当は自分が嫌い」は潜在意識の本音?— 考える前の反応を測るテストでわかること、わからないこと

「自分では自信があるつもりでも、潜在意識では自分を嫌っている」。そんな話を、本やネットで見かけたことはありませんか? 考える前の反応を測れば、本当の気持ちがわかるのでしょうか。

考える前の反応を測るテストで、あなたの「本当の気持ち」を見抜けるわけではありません。

自分についての反応を調べるテストには、いくつかの種類があります。

テスト(例) 何を見ているか そこからは言えないこと
考える前の反応を測るテスト 「自分」と「快・不快」の言葉を組み合わせたときの、分ける速さの差 あなたの価値の、絶対的な高さ
名前の文字の好み 自分の名前に入っている文字を、どれくらい好むか 自尊心の全体と、一対一で対応すること
質問に答える形式 本人が言葉で答える、自分への評価 どんな場面でも変わらない本質

これらのテストを調べた結果からは、意外なことがわかってきています。

  • 名前の頭文字の好みと、本人が答える自尊心との結びつきは、ごく小さかった
  • 考える前の反応を調べるテストどうしでも、結果はあまり一致しなかった
  • そもそも自尊心を測っているのか、という疑問を投げかける専門家もいる

測り直したときの安定のしかたにも、違いが見られました。

約1週間あけて測り直したとき 結果の安定
質問に答える形式 高かった
考える前の反応を測るテスト 低かった

ただし、これは一つの調べの結果で、すべてのテストに当てはまるとは限りません。反対に、このテストが理論どおりの結果を示す、という分析もあります。とはいえ、それも自尊心だけを調べたものではなく、一人ひとりの「本当の価値」を診断できると示したものでもありません。

図にすると、次のようになります。

flowchart TD
    A["自分についての
反応"] B["言葉にして
答える評価"] C["考える前の
反応"] D["測り直しても
比較的安定"] E["測り直すと
ぶれやすい"] F["どちらか一つで
本心は決まらない"] A --> B A --> C B --> D C --> E D --> F E --> F classDef self fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef word fill:#E0F2FE,stroke:#0284C7,stroke-width:2px,color:#082F49 classDef fast fill:#FCE7F3,stroke:#DB2777,stroke-width:2px,color:#500724 classDef result fill:#FEF3C7,stroke:#D97706,stroke-width:2px,color:#451A03 classDef answer fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 class A self class B word class C fast class D,E result class F answer linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

「測り直しても比較的安定」「測り直すとぶれやすい」は、約1週間あけて測り直した、一つの調べの結果です。

質問への答えと、考える前の反応が食い違うことはあります。ただ、その食い違いだけでは、どちらが「本当の自分」かは決まりません。測っている心の働きが違う可能性も、測り方の誤差の可能性も、残るからです。

このテストの一回の結果で、本音は判定できない。この点は、偏見の記事でも見てきました。自尊心でも、同じことが言えそうです。

自分で「大切に思っている」と答える人を、「潜在意識では否定している」と退ける理由はありません。反対に、質問に答えるだけで、すべてがわかるわけでもありません。

自分についての反応にはいくつもの面があり、一つのテストで「本心」は見抜けない。 「本当は自分が嫌いなのかも」と不安になったときも、その一つの結果に、あなたの全部を預ける必要はないのでしょう。

考えるための問い

  • 「潜在意識では、本当は…」という話を聞いて、自分の言葉を疑ったことはありますか?
  • 言葉にできる自分と、とっさに反応する自分。あなたは、どちらも「自分」だと思えますか?

【ポイント1】で見えた潜在意識

紐解いたこと 見えた潜在意識のすがた
高さ・揺れ・条件 自尊心は、高さだけでなく、揺れ方と条件からも見えてくる
価値を預ける分野 何に価値を預けるかで、同じ出来事への揺れ方が変わりうる
考える前の反応 自分への反応はいくつもの面をもち、一つのテストで本心は決まらない

自尊心の揺れは、人とのつながりの中で、どう生まれ、どう育っていくのか。次の【ポイント2】で見ていきます。

【ポイント1】自尊心は「高さ」だけでは測れない — 潜在意識から見た、自分の価値が揺れるしくみ

【ポイント2】自尊心はなぜ揺れ、どう育つのか — 人とのつながりの中で働く潜在意識と、その影

【考えてみよう】に並べた問いのうち、「褒められても、素直に喜べなかったことは?」「子どものころ、温かさを感じた場面は?」の二つを、この章で紐解きます。

この章の答えを、先にまとめておきます。自尊心は、人とのつながりの中で揺れ、育っていくと考えられます。 褒められた回数だけでなく、「予想とのずれ」でもその場の自尊心は動きます。子ども時代で完成するわけでもありません。

章の途中では、意外な結果も紹介します。子どもから高齢者までの記録をまとめると、自尊心の平均は60歳ごろまで上がり続けていました。

この章で紐解くこと ひと言でいうと
褒められたら、自尊心は上がる? 回数だけでなく、「予想とのずれ」でも動く
自尊心は、子ども時代に決まる? 大人になってからも、平均では上がり続ける
自分の価値を証明し続けると? 頑張る力にも、つながりとぶつかる影にもなる

こんな思いに心当たりがある方に、とくに読んでほしい章です。

  • 褒められても、なぜか素直に喜べない
  • 「自信がないのは育ち方のせい」と、どこかであきらめている
  • 指摘されると、つい言い訳や反論をしてしまう

自尊心がどう揺れ、どう育つのか。この章の三つの話を、一枚の図でつないでみます。

flowchart TD
    A["人とのつながり"]
    B["評価への
予想とのずれ"] C["受け取った
温かさ"] D["その場で
自尊心が動く"] E["大人になっても
育っていく"] F["価値を証明し
続けようとすると"] G["光:頑張る力"] H["影:学びや関係
とぶつかる"] A --> B A --> C B --> D C --> E D --> F E --> F F --> G F --> H classDef root fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef sway fill:#FCE7F3,stroke:#DB2777,stroke-width:2px,color:#500724 classDef grow fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 classDef prove fill:#EDE9FE,stroke:#7C3AED,stroke-width:2px,color:#2E1065 classDef light fill:#FEF3C7,stroke:#D97706,stroke-width:2px,color:#451A03 classDef shadow fill:#FFE4E6,stroke:#E11D48,stroke-width:2px,color:#4C0519 class A root class B,D sway class C,E grow class F prove class G light class H shadow linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

この図は、この章の三つの話をつなぐための考え方の図です。

褒められた回数だけでは決まらない — 評価への「予想とのずれ」と、その場で動く自尊心

あまり期待していなかった相手から「助かったよ」と言われて、一日じゅう気分がいい。反対に、当然ほめられると思っていた場面で何も言われないと、なぜか落ちこんでしまう。

人からの評価で、自尊心はどう動くのでしょうか。

褒められた回数だけでは、自尊心の動きは決まりません。「どんな評価を予想していたか」とのずれも、その場の自尊心に関わっていると考えられます。

それを確かめようとした実験があります。

  • 参加者は、ほかの人たちから「好き」か「そうでもない」かの評価を受け取る課題に取り組んだ
  • 評価を受け取る前に、どのくらい好かれると思うかを予想して答えた
  • その場の自尊心の動きは、好かれた回数だけより、予想と実際の評価のずれを組みこんだ説明のほうが、よく表せた

身近な場面に置きかえると、次のようなイメージです。

予想していた評価(例) 実際の評価(例) 心の動き(例)
「きっと認めてもらえない」 思いがけず、褒められた 大きく上がりやすい
「当然、褒められるはず」 褒められた あまり動かないこともある
「当然、褒められるはず」 何も言われなかった 下がりやすい

ただし、この実験には限りもあります。

  • 実験のために用意された評価で、ふだんの人間関係そのものではない
  • 予想も自尊心も本人が答えたもので、潜在意識を読み取ったわけではない
  • 「期待を下げておけば、自尊心が上がる」という教えにはならない

予想と実際のずれで、心が動く。この見方は、予測の記事で紹介した「脳は予測で世界を見ている」という考え方とも重なります。

ここから先は、研究の外にある一つの見方です。評価への予想は、いつも言葉にして立てているとは限りません。「どうせ認めてもらえない」という見込みが、考える前から心の中にあることもあるでしょう。

褒められても素直に喜べないときも、理由は一つではありません。予想とのずれのほかに、相手との関係や、褒められた内容が自分にとってどれくらい大切か、といった理由もありえます。「脳が褒め言葉を受けつけない」と決めつける必要はありません。

日常で気づいてみる

褒められても素直に喜べなかったときは、あとで「どんな言葉を予想していたのか」を少しふり返ってみてください。喜べなかった自分を責めなくて大丈夫です。予想とのずれが見えるだけで、心の動きが少しわかることがあります。

評価そのものだけでなく、「予想とのずれ」でも、その場の自尊心は動く。 同じ褒め言葉でも、うれしい日とそうでない日がある。それは、心が評価を、いつも予想と照らし合わせているからなのかもしれません。

考えるための問い

  • 最近、思いがけず認められてうれしかったのは、どんな場面でしたか? そのとき、どんな評価を予想していましたか?
  • 褒められても喜べなかったとき、その理由は何だったと思いますか?

自尊心は子ども時代で完成しない — 親の温かさの受け取り方と、大人になっても動く自分の価値

「自分に自信が持てないのは、子どものころに十分愛されなかったから」。そんな説明を、目にすることがあります。

自尊心は、子ども時代に決まってしまうのでしょうか。

育つ過程は大切ですが、自尊心は子ども時代で完成するわけではありません。大人になってからも、動き続けると考えられます。

子どもと親を、半年ごとに追いかけた調べがあります。そこでは、「誰が答えた温かさか」によって、結果が分かれました。

誰が答えた「温かさ」か その後の子どもの自尊心との関係
子ども自身が感じた、親の温かさ 関係が見られた
親が自分で答えた、自分の温かさ はっきりした関係は見られなかった

自尊心が高い子ほど、のちに親を温かいと感じる、という逆向きの関係も見られました。親のふるまい、子どもの受け取り方、そのやりとり。どれか一つに、原因を決めることはできません。

この結果は、親の責任を問う話でも、愛情の量を測った話でもありません。親の関わりをまとめた分析では、支えや見守りと、心理的な圧力を分けて考える必要があるとされています。心理的な圧力とは、罪悪感などで子どもを動かそうとする関わり方です。

大人になってからの変化も、わかってきています。子どもから高齢者までの、たくさんの追跡記録をまとめた分析では、自尊心の平均は次のように動いていました。

flowchart TD
    A["子ども時代
上がっていく"] B["思春期
横ばい"] C["青年期
大きく上がる"] D["中年期
上がり続ける"] E["高齢期
横ばいのあと
下がっていく"] F["集団の平均で
一人ひとりの
運命ではない"] A --> B B --> C C --> D D --> E E --> F classDef young fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 classDef flat fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef rise fill:#E0F2FE,stroke:#0284C7,stroke-width:2px,color:#082F49 classDef old fill:#FEF3C7,stroke:#D97706,stroke-width:2px,color:#451A03 classDef note fill:#EDE9FE,stroke:#7C3AED,stroke-width:2px,color:#2E1065 class A young class B flat class C,D rise class E old class F note linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

平均では、大人になってからも60歳ごろまで上がり続けていました。とはいえ、これは集団の平均の話です。一人ひとりの道のりは、それぞれ違います。

仕事に就く前後の自尊心を追った調べもあります。就職の時期や、仕事への満足、まわりから尊重されている感覚によって、自尊心の動き方が違っていました。ただし、「働けば自尊心が上がる」という話ではありません。

大切な人との関係で身につけた見方は、新しい出会いの中で描き足されていく。人間関係の記事で紐解いた、この考え方とも重なります。自尊心も、同じように、出会いや役割の中で動いていくものなのでしょう。

自尊心は、子ども時代に完成するものではなく、大人になってからの経験や関係の中でも動いていく。 子ども時代は大切な手がかりです。ただ、今のあなたを決めるのは、それだけではありません。

考えるための問い

  • 子どものころに感じた温かさは、今のあなたの中に、どんな形で残っていますか?
  • 大人になってから、自分の価値の感じ方が変わったきっかけはありますか?

「自分の価値を証明し続ける」ことの光と影 — 頑張る力にもなれば、学びや人とのつながりとぶつかることもある

ミスを指摘されると、つい言い訳をしてしまう。会議で反対意見を言われると、中身より「否定された」ことが気になって、話が耳に入らない。

自分の価値を守ろうとする心は、どんなときに、人とのつながりとぶつかるのでしょうか。

自尊心が高いことと、自分の価値を証明し続けようとすることは、別のことだと考えられています。 証明し続けようとする思いは、頑張る力にもなれば、学びや人とのつながりとぶつかることもあります。

心理学には、こんな見方があります。「価値ある自分だと証明すること」を何よりも優先し続けると、ほかの大切なこととぶつかる場合がある、というものです。

見るところ 光(例) 影(例)
目標への向き合い方 結果を出そうと、踏ん張る力になる 失敗を認めて学び直すことが、難しくなる
人との関わり 認められたい思いが、やる気になる 相手の話より、自分の評価が気になる

ただし、これは理論です。この見方をまとめた論文でも、多くの調べでは「証明し続けたい」という思いそのものを、直接測っていないと書かれています。努力や、認められたい気持ちが、いつも悪いという話ではありません。

【ポイント1】で見た、「大切にしている」ことと「価値がかかっている」ことの違いを、思い出してみてください。何かを大切にして頑張ることと、頑張りで自分の価値を証明し続けること。外から見ると同じでも、心の中では違う働きとして見ることができます。

人とのつながりと自尊心の関係についても、ふれておきます。人間関係のよさと自尊心は、互いに小さく影響し合っている可能性が報告されています。ただ、同じデータを見直すと、測り方の誤差による見かけの関係かもしれない、という指摘も出ています。どちらの向きの影響も、まだはっきり決まってはいません。

ここで、はっきりさせておきたいことがあります。つらい扱いを受けた人に、「あなたの自尊心が低いから、そんな関係を引き寄せた」と説明できる根拠はありません。関係の問題を、その人の心の中だけのせいにはできません。

価値を証明し続けようとする思いは、力にも影にもなる。 言い訳をしてしまう自分も、その裏で、自分の価値を必死に守ろうとしているのかもしれません。

考えるための問い

  • あなたが「負けられない」と感じるのは、どんな場面ですか? そこで守ろうとしているものは何でしょうか?
  • 指摘を受けたとき、「中身」と「自分の価値」を、分けて受け止められていますか?

【ポイント2】で見えた潜在意識

紐解いたこと 見えた潜在意識のすがた
予想とのずれ 評価そのものだけでなく、予想と照らし合わせて自尊心が動く
子ども時代と、その後 受け取った温かさの中で育ち、大人になってからも動いていく
価値を証明し続けること 頑張る力にもなれば、学びや人とのつながりとぶつかることもある

自分の価値は、できたことの点数で決まるものなのか。次の【ポイント3】では、潜在意識から見た「自分を大切にする」ということを考えます。

【ポイント2】自尊心はなぜ揺れ、どう育つのか — 人とのつながりの中で働く潜在意識と、その影

【ポイント3】自分の価値は「できたこと」の点数ではない — 潜在意識から見た、自分を大切にするということ

【考えてみよう】の終わりには、「人より上でないと、落ち着かないことは?」「うまくいかない日の自分に、どんな言葉をかけている?」という問いを置きました。この章では、この二つを考えます。

この章の答えは、こうです。自分を大切にすることは、人より上に立つことでも、いつも自分を褒めることでもありません。 自尊心は大人になっても変わりえますが、言葉一つで書き換えられるほど単純でもありません。

章の途中では、「肯定的な言葉をくり返すと、かえって逆効果になる」という有名な実験を、確かめ直した結果も紹介します。

この章で紐解くこと ひと言でいうと
自尊心が高い人は、傲慢なの? 自分を受け入れることと、人より上に立つことは別もの
自尊心は、変えられるの? 変わりうるが、簡単に書き換わるわけではない
うまくいかない日の自分は? 人の価値と、感じている「自分の価値」は同じではない

こんなことが気になっている方に、読んでほしい章です。

  • 「自分を好きになる」と、傲慢になりそうで怖い
  • 肯定的な言葉を唱えても、なかなか変われない
  • うまくいかない日の夜、自分を責め続けてしまう

この章でいちばん大切な区別を、先に一枚の図にしておきます。

flowchart TD
    A["自分の価値の感覚"]
    B["できたことへの
評価"] C["人としての
自分への尊重"] D["結果しだいで
上下する"] E["結果で上下
させなくていい"] F["二つを分けると
うまくいかない日も
自分を粗末にしない"] A --> B A --> C B --> D C --> E D --> F E --> F classDef root fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef score fill:#FEF3C7,stroke:#D97706,stroke-width:2px,color:#451A03 classDef respect fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 classDef goal fill:#EDE9FE,stroke:#7C3AED,stroke-width:2px,color:#2E1065 class A root class B,D score class C,E respect class F goal linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

この図は、研究をもとにした考え方の図です。二つの境目が、いつもはっきり分かれているわけではありません。

自尊心は傲慢とは別もの — 人より上に立たなくても、自分を大切にできる

「自分を好きになりましょう」と言われると、どこか抵抗を感じる。自分を認めたら、えらそうな人になってしまいそうだからです。

自尊心が高い人は、傲慢なのでしょうか。

自分を価値ある存在として受け入れることと、人より上に立とうとすることは、別のものだと考えられています。

心理学では、自尊心と、自己愛的な優越感を分けて考えます。

見るところ 自尊心 自己愛的な優越感
自分への感じ方 自分を、十分によい存在として受け入れる 自分は人より上で、特別だと感じる
人との比べ方 人より上でなくても成り立つ 人より上であることで保たれやすい

二つが一緒に見られることはあります。ただ、自尊心が高くなりすぎると自己愛になる、という単純な関係ではありません。

子どもと親を追った調べでも、二つは違う形で表れていました。子どもを「ほかの子より特別」と見る親の過大評価は、のちの子どもの自己愛的な傾向と、小さく関連していました。自尊心とは、関連していませんでした。

ただし、この結果は、ふつうの愛情や褒め言葉を控えるべきだという話ではありません。関連は小さく、生まれ持った気質など、ほかの理由も除けていません。

人を見下すようなふるまいを、心理学者のアドラーは「優越コンプレックス」と呼びました。くわしくは、劣等感の記事で紹介しています。これは研究で確かめた事実ではなく、一つの見方ですが、人より上に立とうとする心の裏をのぞく手がかりになります。

自分らしくいられる感覚についての、日本の若い人たちを対象にした調べもあります。その感覚は、自分の内側を頼ることだけでなく、人から受け入れられている感覚とも関わっていました。一つの学校で、ある時点に調べたものなので、まだ手がかりの段階です。それでも、自分を大切にする感覚が、人とのつながりの中で支えられていることを思わせます。

「自尊心は低めにしておけば、謙虚でいられる」という考えも、研究からは導けません。

人より上に立たなくても、自分を受け入れることはできる。 自分を大切にすることは、まわりを下に見ることとは、向きの違う心の働きです。

考えるための問い

  • 「自分を好きになる」ことに、抵抗を感じるのはなぜでしょうか?
  • 人より上でないと落ち着かないとき、あなたは何を守ろうとしているのでしょうか?

自尊心は変われるのか — 平均的な変化は見られても、言葉を唱えるだけで書き換わるわけではない

「毎朝、鏡の前で『私は価値ある人間だ』と唱えれば、自尊心は上がる」。そんな話を、目にしたことがある方もいるでしょう。

自尊心は、変えられるのでしょうか。

自尊心は、大人になっても変わりえます。ただし、言葉を唱えるだけで書き換わるわけではありません。

【ポイント2】で見たように、自尊心の平均は、大人になってからも動いていました。大人の自尊心を高めようとする取り組みを、たくさん集めてまとめた分析でも、平均すると改善が見られています。

ただし、その分析には、くらべる相手を置かない調べも含まれていました。発表されやすい結果に偏っている可能性を考えると、改善の幅は小さめに見積もられています。どの取り組みがいちばんよいかも、決まってはいません。

取り組みの種類ごとに、わかっていることを整理してみます。

取り組み(例) わかっていること ここからは言えないこと
肯定的な言葉をくり返す 逆効果という結果は、確かめ直すと見られなかった 必ず効く・必ず逆効果
気づかない刺激で、自分とよい言葉を結びつける 自尊心は上がらなかった どんなやり方も効かない
自分への思いやりを育てる 自分を責める気持ちが減った 自尊心そのものが上がった
大切にしたい価値をふり返る 幸福感などに平均的な利点。自尊心は一貫しにくい どの指標も上がる

ひとつめの「肯定的な言葉」は、意外な経過をたどりました。自尊心が低い人がくり返すと、かえって気分が下がった、という実験が話題になりました。ところが、あとから確かめ直した調べでは、同じ結果は見られませんでした。必ず効くとも、必ず逆効果とも言えない、というのが今の見方です。

表に並べた取り組みは、同じ名前で呼ばれることがあっても、中身も、変わったものも違います。「自分を責める気持ちが減った」ことと、「自尊心が上がった」ことも、同じではありません。

「潜在意識を書き換えれば、自尊心は一瞬で上がる」という話を裏づける根拠は、見当たりません。自分と笑顔を結びつけるゲームで、直後の「考える前の反応」に差が出た実験もあります。ただ、本人が答える自尊心は変わっていませんでした。笑顔も、はっきり見える長さで示されていました。

変わりうることと、簡単に書き換えられることの違いを、図にしてみます。

flowchart TD
    A["自尊心は
変われるのか"] B["変わりうる"] C["簡単には
書き換わらない"] D["大人になっても
平均では動く"] E["取り組みで
平均的な改善"] F["唱えるだけで
変わるとは限らない"] G["気づかない刺激
では上がらなかった"] H["変わることと
書き換えることは
違う"] A --> B A --> C B --> D D --> E C --> F F --> G E --> H G --> H classDef ask fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef can fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 classDef limit fill:#FFE4E6,stroke:#E11D48,stroke-width:2px,color:#4C0519 classDef answer fill:#EDE9FE,stroke:#7C3AED,stroke-width:2px,color:#2E1065 class A ask class B,D,E can class C,F,G limit class H answer linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

変化は、言葉一つで起きるというより、経験や人との関わりの中で、ゆっくり動いていくものなのかもしれません。

変わりうることと、簡単に書き換えられることは違う。 唱えても変われなかった自分を、失敗だと責める必要はありません。

考えるための問い

  • これまでに、自分の価値の感じ方が少し変わった経験はありますか? そのとき、何が起きていましたか?
  • 「すぐに変わらなきゃ」と、自分を急かしていることはありませんか?

うまくいかない日の自分を、どう扱うか — 人の価値と、感じている「自分の価値」は同じではない

仕事でうまくいかなかった日の夜。「なんで私は、いつもこうなんだろう」と、布団の中で自分を責め続けてしまう。

うまくいかない日の自分を、私たちは、どんな存在として扱っているのでしょうか。

人としての価値と、あなたが感じている「自分の価値」は、同じではありません。 研究が測っているのは、価値の感じ方が動く条件で、人の価値そのものではない、と考えられます。

ここからは、研究から少し離れた考え方です。自分を尊重することについて、よくある思いこみを整理してみます。

よくある思いこみ 考え方の一つ
自分を大切にする=いつも自分を褒める 失敗を認めながら、自分を粗末に扱わないこともできる
人に支えられて価値を感じるのは弱さ 人との関わりや手応えが意味を持つのは、自然なこと
一つの評価が、自分への最終判決になる 一つの場の評価と、存在の価値は分けて考えられる

不得意なことや失敗を認めることと、自分を粗末に扱ってよいと考えることのあいだには、大きな隔たりがあります。できたことへの評価と、人としての尊重を分けて見る。これは、心理学が見つけた万能の技ではなく、一つの見方です。

目標を手放すことも、自分の価値を手放すことではない。その考え方は、諦めの記事でも紐解きました。できなかった日も、同じように考えることができそうです。

潜在意識という言葉が役に立つのは、自分の反応には、言葉にできていない部分もありうる、と気づく入口になるときです。反対に、その言葉で自分の説明を退けたり、見えない原因を決めつけたりすると、自分への理解はかえって狭くなります。

自尊心の低さと、気分の落ちこみは、互いに関わり合うことが報告されています。ただ、自尊心が低いことを、病気と同じように考える必要はありません。落ちこみが長く続いて、暮らしに支障が出ているときは、ひとりで抱えるより、医療機関や相談窓口を頼ってください。相談先は、この記事のまとめで紹介します。

日常で気づいてみる

うまくいかなかった日の夜、自分にどんな言葉をかけているかに、少しだけ気づいてみてください。言葉を変えなくても大丈夫です。出来事への評価と、自分の価値を分けて見るきっかけになることがあります。

できたことの点数と、人としての価値は、別のもの。 うまくいかない日の自分をどう扱うか。その扱い方の中に、自分を大切にするということの中身があるのでしょう。

考えるための問い

  • うまくいかなかった日の自分に、大切な人にはかけないような言葉を、かけていませんか?
  • あなたにとって「自分を大切にする」とは、どんなことですか?

【ポイント3】で見えた潜在意識

紐解いたこと 見えた潜在意識のすがた
傲慢とは別もの 自分を受け入れる働きと、人より上に立とうとする働きは違う
変われるのか 変わりうるが、言葉や刺激一つで書き換わるわけではない
うまくいかない日の自分 感じている自分の価値は揺れても、人の価値そのものとは分けられる

自尊心は、何に支えられ、どう揺れ、どう変わっていくのか。次のまとめでは、「自尊心は親で決まる?」「言葉を唱えれば高まる?」といったよくある疑問にお答えしながら、見えてきた潜在意識のすがたをふり返ります。

【ポイント3】自分の価値は「できたこと」の点数ではない — 潜在意識から見た、自分を大切にするということ

まとめ|できなかった日の自分も大切にしていい、潜在意識と自尊心から見えたこと

仕事でミスをした日に、「自分には価値がない」とまで感じてしまう。この記事は、誰にでもありそうな、そんな夜から出発しました。

ここまでの答えを、あらためて置いておきます。自尊心は、高い・低いだけで決まる点数ではありません。何に自分の価値を預けているかで揺れ方が変わり、人との関わりの中で、大人になってからも動いていくと考えられます。 揺れているのは、あなたが感じている「自分の価値」で、人としての価値そのものではない。それが、この記事の考え方です。

章の後半では、よく見かける説の真偽も確かめます。「自尊心は親で決まる」「日本人は自尊心が低い」は、本当なのでしょうか。

この章でわかること

  • この記事で見えてきた、潜在意識と自尊心のすがた
  • 「自尊心は親で決まる?」「言葉を唱えれば高まる?」など、よくある7つの疑問への答え
  • 自分を責める気持ちがつらいときの相談先
  • これまでの連載の記事とのつながりと、次に考えたい問い

「できた日」と「できなかった日」から見えた潜在意識のすがた — 自分の価値の感覚は、揺れながら変わっていく

ここまでの四つの章を、一枚の図でふり返ります。

flowchart TD
    A["できた日と
できなかった日"] B["高さ・揺れ・条件
から見る"] C["人とのつながりの
中で揺れ育つ"] D["考える前の反応で
本心は決まらない"] E["子ども時代で
完成しない"] F["人より上に
立たなくていい"] G["できたことの点数と
人の価値は別"] A --> B A --> C B --> D C --> E D --> F E --> F F --> G classDef start fill:#F1F5F9,stroke:#475569,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef p1 fill:#FEF3C7,stroke:#D97706,stroke-width:2px,color:#451A03 classDef p2 fill:#E0F2FE,stroke:#0284C7,stroke-width:2px,color:#082F49 classDef p3 fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 class A start class B,D p1 class C,E p2 class F,G p3 linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

図には、「高さ・揺れ・条件から見る」と「人とのつながりの中で揺れ育つ」の二つの流れがあります。二つは、「人より上に立たなくていい」で合流しています。章ごとの内容も、ふり返っておきましょう。

  • 記事のはじめ:「できた日」と「できなかった日」で、自分の価値の感じ方は変わる。自尊心は、自信とも、人より上だという感覚とも違う
  • 【ポイント1】:自尊心には、高さのほかに揺れと条件がある。何に価値を預けているかで、同じ合否への揺れ方が違った。考える前の反応を測るテストで、本心は見抜けない
  • 【ポイント2】:評価への予想とのずれで、その場の自尊心は動く。子どもが感じた温かさは後の自尊心と関わるが、子ども時代で完成するわけではない。価値を証明し続けようとする思いには、光と影がある
  • 【ポイント3】:自尊心と傲慢は別もの。自尊心は変わりうるが、言葉を唱えるだけで書き換わるわけではない。人の価値と、感じている自分の価値は同じではない

こうして並べると、自尊心は、心の奥に固定された「点数」ではなさそうです。自分の価値を何かに預け、予想とのずれで揺れ、人とのつながりの中で育っていく。 潜在意識は、そんな動き続ける働きとして見えてきました。

あなたの自尊心は、何に支えられているでしょうか。例を並べてみます。

支えにしているもの(例) そこで揺れやすい場面(例)
仕事の成果 評価が思ったより低かった月
見た目 写真に写った自分を見たとき
人からの承認 送ったメッセージに返信がない夜
成績 試験の結果が出た日

これは、答え合わせのための表ではありません。揺れやすい場面が見えると、自分が何に価値を預けているのかが、少し見えてくることがあります。

この記事の内容には、確かさの違うものが混ざっています。分けて整理しておきましょう。

  • 研究でわかってきたこと:何に価値を預けているかで、合否への揺れ方が違った。考える前の反応を測るテストは、測り直すとぶれやすかった。評価への予想とのずれで、その場の自尊心の動きをよく表せた。自尊心の平均は、大人になってからも動いていた。自尊心と、自己愛的な優越感は別の特徴
  • まだはっきりしていないこと:人間関係と自尊心は、どちら向きに影響し合っているのか。考える前の反応のテストは、何をどこまで測っているのか。何にも預けない「条件のいらない自分の価値」は、どう確かめられ、どう保たれるのか
  • 考え方(答えはひとつではない):人の価値と、感じている自分の価値は別。できたことの点数を理由に、自分を粗末に扱わない。潜在意識という言葉で、自分の説明を退けない

では、何もできなかった日にも自分の価値を感じられるとしたら、それは何に支えられているのでしょうか。

誰かとのつながりかもしれません。大切にしている考え方や、好きなことに向かう気持ちかもしれません。答えは、人によって違うはずです。ただ、その問いを持ち続けること自体が、うまくいかない日の自分をどう扱うかを、選び直すきっかけになるのではないでしょうか。

考えるための問い

  • あなたが今、自分の価値を預けているものは何ですか? それは、あなたが本当に大切にしたいものと重なっていますか?
  • 何もできなかった日のあなたを、あなたは、どんな言葉で迎えたいですか?

よくある質問(FAQ)—「自尊心は親で決まる?」「言葉を唱えれば高まる?」は本当?

自尊心と潜在意識について、よく見かける疑問にお答えします。

Q1. 自尊心は、親の育て方で決まるのですか?

親だけで決まる、とは言えません。

【ポイント2】で見たように、子ども自身が感じた親の温かさは、のちの自尊心と関わっていました。ただ、親が自分で答えた温かさでは、はっきりした関係は見られませんでした。自尊心の高い子ほど親を温かいと感じる、という逆向きの関係もありました。

親の関わりをまとめた分析からは、もう一歩進んだことも見えています。

親の関わり(例) 自尊心との関連
話を聞く、励ますといった支え 前向きな関連
生活の決まりや、見守り 前向きな関連
罪悪感などで動かそうとする心理的な圧力 後ろ向きな関連

「決まりを作ること」と「心理的な圧力」は、同じ「厳しさ」でも分けて考えられています。関連の強さは、年齢や測り方などによっても違っていました。これらは関連を見たもので、「この育て方をすれば、この自尊心になる」という原因を示したものではありません。

自尊心は、気質や友だち、学校や仕事での経験など、たくさんのものの中で動いていきます。平均では大人になってからも動くことを考えると、「親で決まってしまった」と、あきらめる必要はありません。

Q2. 肯定的な言葉を唱えれば、自尊心は高まりますか?

高まる、と約束できる根拠はありません。

【ポイント3】でふれたように、「自尊心が低い人には逆効果」という有名な結果は、確かめ直すと見られませんでした。必ず効くとも、必ず逆効果とも言えないのが、今の見方です。

唱えることで気持ちが少し楽になるなら、無理にやめることはありません。変われなかったとしても、【ポイント3】で見たように、それはあなたの失敗ではありません。「言葉一つで潜在意識が書き換わる」という説明には、慎重になってよいでしょう。

Q3. 自尊心が低いと、成功できないのですか?

成功できない、とは言えません。

自尊心が高い人は、平均すると少しよい方向に進みやすい。長い期間を追った調べからは、そんな結果が積み重なってきています。人間関係や仕事、心と体の健康などでの話です。

とはいえ、その差は全体として小さく、自尊心だけで人生が決まるわけではありません。生活の条件や、まわりの支え、その人の努力や運など、ほかにもたくさんのことが関わっています。自尊心の点数から、一人ひとりの未来を言い当てることはできません。

Q4. 日本人は、自尊心が低いのですか?

「日本人は自尊心が低い」と、言い切ることはできません。

48か国を対象にした大規模なインターネット調査では、年齢や男女による自尊心の違いが、広く見られました。ただ、その違いの大きさは国によって異なり、国の社会や文化の特徴とも関わっていました。

ただし、この調査は、それぞれの国の人口を代表するように選ばれた調べではありません。質問への答え方そのものが、文化によって違う可能性もあります。国ごとの結果を、「自分を大切にできる国民の順位」に置きかえることはできません。

日本語の自尊心の質問票は、英語版と同じように使えるかを確かめる調べも行われています。とはいえ、それも「どの文化でも答えの意味がまったく同じ」と保証するものではありません。

Q5. 「潜在意識が自尊心の95%を決める」「一瞬で書き換えられる」は本当ですか?

どちらも、裏づける根拠は見当たりません。

この記事で見てきたように、心理学では、自分についての反応を、いくつもの課題に分けて調べています。心の中の一つの割合として、潜在意識を測るやり方は見当たりません。

ほかにも、よく見かける説明があります。

よく見かける説明 実際のところ
潜在意識が、自尊心の95%を決める 自分への反応を、いくつもの課題に分けて調べている段階
潜在意識を書き換えれば、一瞬で上がる 言葉や気づかない刺激で、簡単に書き換わる根拠はない
不安定な自信は、偽物の自尊心 同じ高さでも、揺れ方は人や場面で違いうる
自尊心の低さが、つらい関係を引き寄せる 関係の問題を、その人の心の中だけのせいにする根拠はない

はっきりした数字や、「一瞬で」という言葉ほど、そのまま信じる前に、どこから来た話なのかを確かめてみてください。

Q6. 自尊心が低いのは、心の病気なのですか?

自尊心が低いことを、そのまま病気と考える必要はありません。

【ポイント3】でもふれたとおり、自尊心の低さと気分の落ちこみは、互いに関わり合うことが報告されています。長い期間を追った調べをまとめると、自尊心の低さから落ちこみへ向かう関わりのほうが、逆向きより強く見られました。

ただし、これは関連を見たもので、自尊心の低さが、落ちこみの原因だと決まったわけではありません。自尊心が低いのは、あなたの考え方が悪いせい、という話でもありません。

気分の落ちこみが長く続き、暮らしに支障が出ているときは、自尊心の問題として抱えこまないでください。医療機関や相談窓口を頼ることも、自分を大切にする一つの形です。

Q7. 自分を責める気持ちがつらいとき、どこに相談すればいいですか?

ひとりで抱えこまないで、誰かに話してください。

うまくいかない日に自分を責めてしまうことは、誰にでもあります。けれど、次のような状態が続いているときは、医療機関(精神科や心療内科など)や相談窓口を頼ってください。

  • 気分がひどく落ちこみ、何をしても楽しくない状態が続いている
  • 眠れない、食事がおいしくない、人と話すのがおっくうな状態が長く続いている
  • 自分を責める気持ちが強く、将来に希望がもてない
  • これまでできていたことが、できなくなっている
  • 「消えてしまいたい」と思うことがある

今すぐ命に危険があるときは、迷わず119番に電話してください。

こんなとき 相談先 連絡のしかた
地域の公的な窓口に相談したい こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
夜中でも、誰かと話したい よりそいホットライン 0120-279-338(無料・24時間)
つらい気持ちを、誰かに聞いてほしい いのちの電話 0120-783-556(無料・毎日16時〜21時)
「死にたい」「消えたい」ほどつらい #いのちSOS 0120-061-338(無料・24時間365日)
18歳までの子ども チャイルドライン 0120-99-7777(無料・毎日16時〜21時)
いじめなど、子どもの悩み 24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(無料・24時間)
  • こころの健康相談統一ダイヤルは、電話をかけた地域の公的な相談窓口につながります。通話料がかかり、受付の曜日や時間は地域によって違います。050で始まる番号からは、つながりません
  • よりそいホットラインは、050で始まる番号からは 050-3655-0279 にかけます。福島県からは 0120-279-226 です。外国語での相談も選べます
  • いのちの電話は、毎月10日は午前8時から翌日の午前8時まで受け付けています。通話料のかかる 0570-783-556(午前10時〜午後10時)もあります
  • チャイルドラインは、12月29日から1月3日まで休みです
  • 電話が苦手なときは、SNSやチャットで相談できる窓口もあります。厚生労働省のサイト「まもろうよ こころ」にまとめられています

受付時間などは変わることがあるので、最新の情報は各公式サイトで確認してください。

考えるための問い

  • この記事を読む前と今とで、「自尊心は親で決まる」「自尊心が低いと成功できない」という言葉の見え方は、変わりましたか?

この記事のまとめ — 自分の価値を、何に預けて生きるのか

記事全体を、章ごとに表でふり返ります。

章 わかったこと 考えたい問い
記事のはじめ 「できた日」と「できなかった日」で価値の感じ方は変わる その揺れは、出来事への評価? 自分全体への評価?
【ポイント1】 高さのほかに、揺れと条件がある 自分の価値を、何に預けている?
【ポイント2】 予想とのずれで揺れ、つながりの中で育つ 子ども時代のあとに、何が支えになった?
【ポイント3】 人の価値と、感じている自分の価値は別 うまくいかない日の自分を、どう扱う?
まとめ できなかった日の自分も、大切にしていい 自分の価値を、何に預けて生きる?

自分の価値の感覚は、出会いや関係の中で揺れながら育ち、大人になっても動いていきます。それでも、できたことの点数と人としての価値は、分けて見ることができます。

記事のはじめで、「読み終えたあとに、あらためて同じ問いに戻ってきてください」とお伝えしました。あの問いは、今どう見えるでしょうか。

冒頭の問い この記事で見えてきたこと
うまくいった日にだけ、自分を認められることは? 何に価値を預けているかで、揺れ方は変わりうる
一つの失敗が、自分全体の否定に広がったことは? 出来事への評価と、自分全体への評価は別もの
褒められても、素直に喜べなかったことは? 予想とのずれなど、理由は一つではない
子どものころ、温かさを感じた場面は? 受け取った温かさは大切。ただ、子ども時代で完成しない
人より上でないと、落ち着かないことは? 自尊心と、人より上に立とうとする心は別もの
うまくいかない日の自分に、どんな言葉をかけている? 人の価値と、感じている自分の価値は分けられる

この連載では、記事ごとに見えてきた潜在意識のすがたを、一枚の見取り図にまとめてきました。今回の「自尊心」を加えると、次のようになります。

flowchart TD
    S1["劣等感
人と比べる"] S2["同調圧力
周りの本音を
推し量る"] S3["予測
世界を
先回りして読む"] S4["知識
わかった気に
なる"] S5["自己評価
自分の力を
見積もる"] S6["環境
まわりに
反応する"] S7["人間関係
大切な人を重ね
出会いで描き足す"] S8["偏見
社会の当たり前を
人に重ねる"] S9["諦め
変えられるかを
先読みし選び直す"] S10["自尊心
価値を預け
揺れながら育つ"] Z["潜在意識は
考える前に働く
しくみの集まり"] S1 --> S2 S2 --> S3 S3 --> S4 S4 --> S5 S5 --> S6 S6 --> S7 S7 --> S8 S8 --> S9 S9 --> S10 S10 --> Z classDef past fill:#F1F5F9,stroke:#64748B,stroke-width:2px,color:#0F172A classDef now fill:#FCE7F3,stroke:#DB2777,stroke-width:2px,color:#500724 classDef common fill:#DCFCE7,stroke:#16A34A,stroke-width:2px,color:#052E16 class S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8,S9 past class S10 now class Z common linkStyle default stroke:#94A3B8,stroke-width:2px

これまでのテーマ 今回の「自尊心」とのつながり
劣等感 人と比べる心は、「人より上でないと落ち着かない」心とも隣り合う
同調圧力 周りの本音を推し量る心は、評価への予想の材料にもなりうる
予測 評価への予想とのずれで、その場の自尊心が動く
知識 「自分はダメだ」という感覚も、確かめる前のわかったつもりかもしれない
自己評価 力の見積もりと、自分の価値の感覚は、重なりながらも別の話
環境 見るだけで書き換わらないのと同じく、気づかない刺激で自尊心は上がらなかった
人間関係 自尊心も、出会いや関係の中で描き足されていく
偏見 考える前の反応を測るテストの一回で、本音はわからない
諦め 目標を手放しても、自分の価値まで手放すわけではない

並べてみると、潜在意識は、心の奥にいる「もう一人の自分」とは違う姿に見えてきます。比べる、推し量る、先回りする、わかった気になる、見積もる、反応する、重ねる、先読みする。今回の記事で加わったのは、「自分の価値」を感じる働きです。その感覚は、何かに預けられ、評価との照らし合わせで揺れ、出会いの中で育っていきます。

前回の諦めの記事は、「『自分には価値がある』という感覚は、潜在意識のどこで育まれるのか」という問いで終わりました。この記事なりの答えは、「どこか一か所ではなく、人とのつながりの中で、揺れながら育まれていく」というものです。

この見取り図は、ひとつのしくみとして確かめられたものではありません。連載の記事をつなぐための、描きかけの地図です。

次に考えたい問い

  • 人に見られていると、私たちのふるまいは、なぜ変わるのでしょうか?
  • 「自分を大切にすること」と「人を大切にすること」は、どこでつながっているのでしょうか?
  • 何にも預けずに、自分の価値を感じることはできるのでしょうか?

あわせて読みたい

できなかった日の自分も、大切にしていい。私たちの心は、自分の価値を何かに預け、ちょっとした評価のずれにも揺れてしまいます。それでも、その揺れは、人としての価値が上がったり下がったりしているしるしではありません。次に「私なんて」とつぶやきそうになったら、少しだけ立ち止まってみてください。その言葉は、出来事への評価でしょうか。それとも、自分という存在への評価でしょうか。

考えるための問い

  • 記事を読み終えた今、あなたは自分の価値を、何に預けて生きていきたいですか? 読みはじめたときと、答えは変わりましたか?

この記事が、うまくいかない日に自分を責めてしまう誰かの役に立ちそうなら、ぜひシェアしてください。

まとめ|できなかった日の自分も大切にしていい、潜在意識と自尊心から見えたこと

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